憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。


 亜矢ちゃんから返ってきた返事は、咲村さんの孫だと思わせる言葉だった。

「祖父は私がまだ四歳だった頃、花岡総合病院に入院しました。そして花岡総合病院で息を引き取りました」

 祖父の病名は分からないとのことだったが、病院名も時系列も間違いない。今俺の目の前にいるこの子は、あの咲村亜矢ちゃんだ。

 話の流れを聞いていた仁田先生に「へぇ、それすごい再会だね。羽倉先生運命の人見つけちゃったんじゃないですかー?」とからかわれる。

 亜矢ちゃんは仁田先生の冷やかしに「羽倉先生の身の丈にあっていない」と返した。

 亜矢ちゃんの友人も側にいる。彼氏がいたら「身の丈にあっていない」なんて否定的な言葉は言わないだろうし、結婚していたら結婚していると言うだろう。

 つまり亜矢ちゃんは結婚していないし、彼氏もいない。

 そう思うといてもたってもいられなくなり、「番号、教えて!」と腕を掴んで引き留めていた。


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