憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
状況を読み込めていないようで唖然と俺を見る亜矢ちゃん。それでも諦めずに粘る。
「連絡するから、番号教えて」
「は、はい!」
亜矢ちゃんと番号の交換ができそうだったにも関わらず、友人が亜矢ちゃんの腕を引いた。亜矢ちゃんは連れられるまま、俺たちの前から去って行った。
もう会えないのか? 嘘だろ、そんなこと……
「先生方、すみませんが俺……」
「アッハッハ! いやーこんな取り乱した羽倉先生が見れるなんてね!」
柳先生は「貴重な光景が見れた」と言わんばかりに満足満足と手を叩いた。
いつもは柳先生の明るいキャラに癒やされているが、今日はカチンときてしまう。
何言ってるんだ、俺は全然満足してない!
――そう声をあげそうになった時に窓から外を眺めていた仁田先生が、「ちょっと! あれ、あれ!」と窓の外を指差した。
仁田先生に言われるがまま窓の方へ向かい、外を眺めてみると、入り口で友人と亜矢ちゃんが話していると。
亜矢ちゃんは友人にお札を差し出している。それを友人に握らせたかとおもいきや、友人は強引に亜矢ちゃんが持っていたもう片方の手から財布を奪い取り、お札の束を抜き取った。
「はあ!? なにあれ!」
仁田先生が大声をあげたため、他のお客が俺たちを一斉に見る。