憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
「え!? はい。私だったら一泊もできないと思うので」
「長期で泊まる人やホテルと契約している人なんかは一泊いくらって価格ではなく、凄く安く借りられるんだ」
「そうなんですか?」
「うん。俺の場合、ずっとホテル生活だから長期滞在扱いで住民票も移すことができたんだ」
「だから助かったよ」と、微笑む羽倉先生。
「俺の部屋、ここ」
羽倉先生はゴールドのカードキーをかざし「どうぞ」と私の背中をゆっくり押した。
「し、失礼します」
中へ入り、部屋の入り口で靴を脱ぎ、靴箱に入れる。靴箱の中は羽倉先生が履く靴であろうものが一足しかなかった。
「先生、靴この一足だけですか?」
「いや、まだあるにはあるんだけど履かないから別のところに仕舞ってるだけ」
必要最低限の物しか出さない。羽倉先生の几帳面さが垣間みえた気がする。
羽倉先生が用意してくれた部屋用のスリッパを履き室内へと向かう。
入って早々、広々としたダイニングとリビングが視界に入ってきた。中の壁紙は白色で統一されていて、清潔感が漂っている。お部屋の天井からもシャンデリアが吊るされていて、床は一面大理石で覆われていた。