憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。


 部屋は一面ガラス窓になっており、上階からの景色がよく見える。

 羽倉先生から次々と部屋の中を案内された。

「……で、ここは一室空き部屋になってるから。亜矢ちゃんはここを使っていいよ」

「いいんですか?」

「うん。でも、寝る時は寝室で一緒に寝てくれる?」

 揺るがない笑顔で問いかけてくる羽倉先生。

 『寝る時は一緒』そう言われ、私の中に緊張感が走る。つまり、今日一緒に寝るということだろうか。

「…………はい」

 か細い声で返事をすると、羽倉先生は私の頭をポンポンと撫でた。

 好きにならない、好きになってはいけない。そう決めていたはずなのに、少しでも気を緩ませると、羽倉先生に全部を持っていかれてしまう。

「っていっても、俺、大抵寝室のデスクで仕事してるから、先に寝てていいよ」

 「オペの術式の確認もしなきゃいけないし、論文の作成もあるしね」と、夜も満足に寝ることすらできなそうな羽倉先生。

 一日泊まるにしても、何かしら羽倉先生の役に立ちたい。

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