憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
羽倉先生は少し体を浮かせて私の方へと顔を向ける。目と目が合い視線を逸らそうとした時、
「じゃあさ、亜矢ちゃんは?」
首を傾げながら私に質問をした。
「…………へ?」
「亜矢ちゃんも俺に色っぽいとか感じてんの?」
「当たり前です! でなきゃ、こんなこと言いません!」
恥ずかしさのあまり、強めの口調を発してしまった。
今のは羽倉先生が悪い。私は悪くない。
「じゃあ今は? 俺となにしたい?」
「なにってマッサージ……」
「そうじゃなくて。もっと違う、気持ちいいこと。俺、これでも柄にもなく誘ってんだけど……」
「いい加減気づいて」と、拗ねる羽倉先生がかわいくて心臓が止まりそうになる。
……お、落ち着け。落ち着かなきゃ鼻血が出る。
「俺、自分で言うのもいやらしいかもしれないけど、今までいろんな女性に声かけられてたから特別困ることってなかったんだよね」
首のコリを解かす私に、羽倉先生は自分のことを話し始めた。
羽倉先生の女性感はできることなら聞きたくないけれど、逃げれる状況ではない今、話を聞く。
「……はい」
「でもさ、今凄く困ってる」
「……え?」
「亜矢ちゃんに触れたくて……困る。こんな気持ち、今までなったことないからどうしたらいいか分からないんだけど……どうしたらいい?」