憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。



「あ、あの……羽倉先生ごめんなさい、それは……無理です」

「……無理?」

「羽倉先生のお相手になりたい方はたくさんいらっしゃいます。私はできません、ごめんなさい」

 マッサージをしていた手を止め、羽倉先生にそう告げてから体の上から下りた。

「羽倉先生、明日はお仕事って言っていましたし、さすがにもう寝てください。私も明日朝イチにはここを出て家に帰りますので」

 ベッドから降り、使っていいと言われていた自室に行こうとした時、羽倉先生から腕を掴まれた。振り向くと、Barで私に見せた表情と同じような、切羽詰まった表情をしている。

「明日ってなに? 一週間は一緒にいてくれるんだろ?」

「…………一週間?」

「亜矢ちゃん、元々友達のところに一週間泊まりにくる予定だったんでしょ。今仕事してないんでしょ。それなら一緒にいてよ」

「…………で、でも」

「俺と一緒にいたくない?」

「まってください、違います! 私はただ、私がいることで羽倉先生が迷惑するだろうって思ったので」

「迷惑じゃない! むしろ帰られる方が大迷惑。亜矢ちゃんにここにいてほしい」


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