憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
「……えっと、はい。正確には羽倉先生が入れてくださいました」
「えー!? ちっ、ドアホの羽倉め。亜矢ちゃんお金は!? 羽倉先生、亜矢ちゃんの所持金が二百五十円ってこと知ってるの?」
「いえ、所持金までは……でも、お金は羽倉先生が貸してくださいました」
そう言うと、「もー、ビックリしたー」と、安心したように息を吐いた。
「で? 羽倉先生とどうなってるの!」
これが本来聞きたかったことなんだな、ということが、仁田先生の明るい表情で理解した。
「え、えっと……一週間住まわせてもらうことになりました」
電話で告げたことと同じことを言うと、仁田先生はうんうんと強く頷いた。
合間合間にコースメニューが私と仁田先生の前に並ぶ。牛肉のカルパッチョに合うワインも注がれた。仁田先生の元には烏龍茶が注がれている。
私だけお酒を飲んでしまっていいんだろうか、そんなことを考えていると、
「告られた!?」
仁田先生はまた嬉しそうに質問してきた。
「こ…告白!? そんなわけないです! 元々一週間莉緒香の家にいる予定だったことをお伝えしたら、それなら一緒にいようと言ってくださいまして」
だいぶ端折りながら説明すると、仁田先生は牛肉のカルパッチョをフォークで食べながら「うんうん」とまた強く頷いた。
「いただきます」
私も牛肉のカルパッチョをいただく。牛肉の旨味とチーズのコク、バルサミコスのソースが合っていてとても美味しい。