憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
車のシートはとても座り心地が良い。
「莉緒香、きれいになったね。凄く街に馴染んでる。それにこの車もすごいね」
と、莉緒香に言うと、
「ありがとう。亜矢は高校の時から変わらないね。そんな変わらない亜矢が私は大好き。亜矢はそのままでいてね」
莉緒香から返ってきた言葉に、彼女の苦手な部分を垣間見た瞬間だった。
莉緒香は昔から自分が優位に立ちたい為か、人を下に見る傾向があった。クラスでもカースト上位の莉緒香に逆らうものはいなかった。
昔から要領も良く、先生にも好かれるタイプだけれど、影で人の陰口を言う莉緒香が私はあまり好きではなかった。高校を離れると同時に、私から自然と距離を置いてしまった。
久しぶりの再会。お互い高校を卒業して社会を知って大人になった。以前までの莉緒香ではないはずだ。さっきの鼻につく言い方も、私が気にしすぎなだけだ。
せっかく憧れの街にいるんだ。莉緒香もこうして誘ってくれたわけだし、余計なことを考えるのはやめよう。
「この車ね、ロールスロイスなの。移動は少しでも良い座席に拘りたいじゃない?」
莉緒香から話題を振ってくれたために頷く。
「ロールスロイスってテレビやネットでしか見たことない……」
「あら、亜矢もここでいい人見つけたら、玉の輿に乗れるんじゃない?」