憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。


 ◆

 イタリアン料理を堪能した私は仁田先生から連れられ、化粧品コーナーへと移動した。なんでも、私に何かプレゼントしてくれるらしく、

「うーん、これかなあ? こっちかなー?」

 口紅のサンプルを私の唇に交互に当て悩んでいた。

「これとこれとこれが亜矢ちゃんに合うのよねー」

 値段を確認しようと値札を覗き込むけれど、上手く見えない。仁田先生は値段を確認しようとしないけれど、これが貧乏人と裕福な人の差なのかもしれない。


 結局確認できた頃には仁田先生がお会計をしている最中で、値段は一本一万円もする。その色違いを三本買っていたから口紅だけで三万円だ。

「ま、まってください、仁田先生! こんな高い物、大丈夫です! 私、千五百円の口紅使ってるので、それで十分です」

 お会計を止めようと割って入ると、

「でも、発色も色の持ち具合も全然比べ物にならないよ? いいから、騙されたと思って使ってみてよ」

 仁田先生は私の意見を聞くことをせず、ノリノリで購入してしまった。

 その後も、何かしら私にプレゼントをする仁田先生。

 もはや私に対してお金を散財している。

「あ、あの、仁田先生、もう大丈夫なので……」

 そう止めるも、上機嫌な仁田先生は聞いてすらいない。


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