憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。


「とにかく暴言が酷いんです。『教えねぇから見て覚えろ! クズ!』とか、『入力終わらせとけって言ったろうが!』って、ノートで頭叩かれたり、もう怖くて聞きたいことがあっても聞けないです」

 泣きそうになる小川くん。本田先生は俺や他の先生に対しての愛想はもの凄く良いため、そこまで酷く小川くんに当たっているとは思わなかった。

 というか、俺が手術場に入りすぎて医局室にいる時間が少ないため、小川くんの現状を知り得ることができなかった。

 小川くんには楽しみながら残り一カ月の脳外科研修を過ごしてほしい。脳外科だけではない、外科医の仕事のやりがいをちゃんと知ってほしい。

「よし、じゃあ小川くんの指導医は俺がなろうか。ちょうどバイパス術も終わったばかりだから患者さんの様態もこまめにチェックしなきゃならないし」 

「ほ、本当ですか!? で、でもお願いしといてなんですが、羽倉先生業務たくさん抱えてるんじゃ……迷惑じゃないですか?」

「事情も事情だしね。大丈夫だよ。じゃあ、院長と本田先生には当たり障りない感じで俺から伝えるね」

「はい! ありがとうございます!!」

 嬉しそうにガッツポーズをする小川くん。

 つい、情で引き受けてしまったとはいえ、俺の仕事量もだいぶヤバイことになっている。

 気持ちを落ち着かせるために息抜きがてら、スマホに目を落とす。仁田先生から連絡がきていた。


【今日亜矢ちゃんをデートに誘いまーす】


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