愚かなキミの、ひと目惚れ事情。【完】




「──分かった?だから私、アンタとは付き合えない」

「なんで?これからまた消えるつもりだから?」

「……それは」

「まぁ、そう簡単に手放しはしませんけども」

「ねぇ、もう私に構わないで。お願いだから」

「絶対やだ。だって俺ね、産まれて初めて葉ちゃんにひと目惚れしたんだもん」

「は?」

「ひ、と、め、ぼ、れ」




ジュエリーショップの上品な店員さんは、大層困った顔をしながら私達の様子を伺っている。

けれど今、この場でひと目惚れしましたなどと意味の分からないことを突如白状された私も、同じくらい困り果てている。



そもそも高校へ入学してからの二年間、クラスの女子達が何度か口に出していた「瀬名川」という苗字以外、彼と会話をしたことは愚か、面識さえもない。



それなのに何がひと目惚れだ。




「他を当たってよ」

「当たりませんよ」

「だって私アンタのこと知らないし」

「俺は知ってるからいいの」

「……は?気持ち悪いんだけど」




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