愚かなキミの、ひと目惚れ事情。【完】
イチャイチャ、だなんてそんな安易な言葉で表すほどのことではないにしても、それに近しい"何か"は孕んでいる。
この年になれば今まで誰かと付き合った経験がなくとも、恋人とはなんたるやの彼是は知っている。
いや、きっと今ドキ小学生だって知ってるよ。
そもそも彼が私と関係を持ったのは、そういうことがしたいからなんでしょ?
未だに私が知識としてしか知らないコトをしたいからなんでしょ?
別に嫌じゃない。
私なんかとそういうことがしたいなら、好きにすればいい。
光るモノを失くした今の私に、他人に求められるようなことがあるのなら……好きにしてくれればいい。
こんなふうに静かに、穏やかに、平凡でいるより何倍も──……気が晴れるから。
「いいよ、このままで」
「え?」
「必死に何かしよう、だなんて思わなくていいよ。もう」
「どういう……」
「自分の、他人の、誰かの特別を探さなくていいよってことだよ。何もない自分ってのも、案外いいモノだって俺は思うよ?」
「でも、だって、それじゃあ私は……っ、なんのために生きてるの?」
「その答えが見つかるまではさ?今はただ俺に愛されておきなよ」
「……っ」