愚かなキミの、ひと目惚れ事情。【完】
「……何が、目的なの」
「最終的には結婚したい」
「ふざけないでってば!一体何が目的なのよ!私に何がしたいの!」
「何も、したくない。俺はキミに、何も求めない」
「はぁ!?」
「葉ちゃん。手、もっと大事にしなよ。そんなに握りしめることないでしょ」
「うるさい!どうして、なんでこの右手のこと知ってんのよ!」
「葉ちゃん、手」
「うるさいうるさいっ!」
「……俺、怒るよ?」
どういうことなの?
瀬名川だなんて大きな肩書きを持ちながら、一体私に何がしたいの?
どう考えてもバカにしているようにしか思えない。
この右手が使いものにならなくなったと知っているのならなおさら、私が書道をやめたことだって知っているはずだ。
知っていて、私に近づいた。
きっと事情を分かった上で、私と関わりを持とうとした。