愚かなキミの、ひと目惚れ事情。【完】
「この、嘘つき」
何が、何がひと目惚れしただ。
瀬名川の苗字を持っていたらきっと、所詮はただの高校生同士が行うコンテストや賞には参加できないのだろう。
"そんな賞"をもらっていた私を見下した?
"そんな賞"すら取れなくなった私を嘲笑った?
「俺、葉ちゃんに嘘ついたことなんてないんだけど」
「ついた!何が、ひと目惚れよ……っ!そうやって弱ってる私に声をかければ揺らぐと思った!?チョロいと思った!?でも実際、私は今こうやってアンタと肩並べて一緒にいるもんね!思惑通りってやつなんでしょ!この嘘つき!!」
「──完全にひと目惚れだよ。キミの、書道に対する姿勢と……字、にね」
「……っ!?」
「コンテストに出してた字も好きだったな。流派にこだわらないところも、思いの丈を全部吐き出したかのような字も、さ」
「……っ」
「なのになんで急に辞めちゃったのかなって、調べているうちに……キミ本人に興味を持ったよ」
「それ以上、喋んないで」
「一年の頃から存在自体は知ってたけど」
「喋んないで、お願いだから」
「ここまで芯の通った子は初めて見た」