愚かなキミの、ひと目惚れ事情。【完】




瀬名川が何かを言うたびに、自分が惨めに思えてくるからやめてとお願いしているにも関わらず、彼はツラツラとどうでもいいことを吐き続けた。



もうどうでもいい、どうだっていい。

家に帰っても、学校にいても、どこに行ってももう私の居場所はない。


書道で輝けない私は、私じゃない。




元より捨てようとした命だ。

どうなろうと知ったこっちゃない。




「この子から書道が消えたら、どうなるんだろうなあって疑問はあったよ」

「……」

「まあ案の定、キミは脆かった」

「……黙って」

「葉ちゃんが自ら命を絶とうとしてたのはちょっと予想外だったけど、でもほとんど想像通り。俺の読みは正しかった」

「アンタみたいなのを、クズって言うんだよ」





できることなら、今すぐ殺してやりたい。


けれどこれ以上ここで言い合ったところで何も解決はしないし、私の右手が治るわけでもない。


言いたいことの大半が喉に閊えて出てこないまま、私は今にも彼に飛びかかりそうな殺意をどうにか抑えて踵を返した。






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