愚かなキミの、ひと目惚れ事情。【完】
02.





「じゃじゃーん!」

「……」

(よう)ちゃんが恋って言うから愛に来ましたー!」



桜の木もすっかり葉桜に変わった、全く色気のない木々を何気なく見つめながら、学校まであと少しの距離を歩いていた。

分厚い雲に覆われて、度々吹き荒れる風もなんだか昨日に比べると幾分かぬるく感じる。



そんな五月も終わりの情景を一切薙ぎ払うかのように、ポケットに手を突っ込みながら軽快なステップで近付いてきたのは……誰だっけ。





「……誰、アンタ」

「え、嘘でしょ?本気で言ってる?」

「……」

「一週間前にすべての勇気を振り絞ってキミに告白して、キミの彼氏の座をもぎ取った、友達の間では『勇者』って呼ばれてんだけど本当にご存じない?俺のこと」

「は?彼氏?知らないんですけど」

「え、困るんですけど」

「いや私のほうが困るんですけど」

「勘弁してよ。葉ちゃんの彼氏になりましたって言いふらしたばかりなんですけど」

「何やってくれてんだって感じなんですけど」



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