愚かなキミの、ひと目惚れ事情。【完】
この男と出会ったという一週間前と言えば、ちょうど"あの日"と重なる。
ドン底に突き落とされて、もう見込みはないと言われ、あとは神頼みくらいしかないみたいな言い方で見放された、あの日──。
「……っ」
いやだ、もう何も考えたくない。
首を振る代わりに、後ろにいる男のことを無理やり考えてそれの代わりに宛がった。
それでも少しずつ蘇ってくるのが、人生最大の最悪な記憶……というやつだ。
あのときはかなりヤケクソになっていて、いくつかの初めてを経験した。
初めて高級な和食店に一人で足を踏み入れた。
初めて悪いことをしてみた。
初めて年齢を誤魔化して夜の街に繰り出した、そして、初めて――。
「……アンタってもしかして」
「わわわっ!葉ちゃんなになに!?いきなり振り向かれたら……」
「あ、ごめん」
「ドキッて、するじゃん?」
「気持ち悪い」