愚かなキミの、ひと目惚れ事情。【完】
03.
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放課後のチャイムが、静かな教室に鳴り響いた。
このチャイムを合図に、クラスは一気にザワつき始める。
「……」
以前の私なら、一秒だって無駄にはできないと言いながら書道教室まで突っ走っていたのに。
一応学校の規則だからと、"書道部"の一員として活動していたけれど、最近流行りの書道パフォーマンスだなんてモノには目もくれず、部員の顔すら把握しきれないくらいに、私はただ自分の世界にのめり込んでいた。
部活が活動日だろうが休みだろうが関係ない。
気が済むまで、ひたすら筆を走らせては言い表せられない喜びに浸っていた。
けれどそれはもう、過去のこと。
こんなにも情けなく、惨めに陥った私にはもう……居場所がなくなった。
私はこれから一体、何をすればいいんだっけ?
あぁ、そうか家に帰ればいいんだ。
家に帰って、出された課題を済ませて、それから──。
何の感情も持たないままゆっくりと立ち上がって、空っぽのスクールカバンを手に持ちながら、すっかり人が少なくなった教室を後にする。