仮定法過去の恋〈下〉
「部活で後輩連れてきたり、ここで帯留め作るワークショップに部員で参加したりしているから知り合いなの」 



「茶道部って意外とアクティブなんだな。和室で茶飲んでるだけだと思ってたわ」



「失礼な。お茶飲んでるだけって、それもお点前ってお茶を点てなきゃいけないんだから。それを覚えて、お茶室借りてお茶会も開くんだよ。それに練り菓子とかお茶碗を作成するワークショップに参加したり、博物館に歴史の勉強しに行ったり……。運動部に比べれば、まあ、楽だけど、結構ちゃんとやってるんだよ」




「まあまあ、喧嘩しないで。今日は何を見に来たの」



「あ、すみません。つい、来るときに仲良くなっちゃって。彼が女子に浴衣プレゼントしたいっていうから、まだ浴衣ってありますか」



「あるわよ、もう奥に移動しちゃったけど、色もまだあるから」





案内され、奥の畳へ靴を脱いで進む。



畳の店なんて敷居が高い。少しうるさいところもあるが、面倒見のいい陽菜にお願いできてよかったと恭平は胸を下した。




「どういう浴衣を探しているの?彼女さんにプレゼントかしら」



店員に聞かれ、どきっとする。



店員さんの目は優しかったし、陽菜はさっきとは打って変わって真剣にかけられた浴衣を見つめている。




「その、彼女ではないのですが、プレゼントしたい相手がいて」



「予算はどのくらい」



「5千円から7千円なら」



年末年始に郵便局で年賀状のバイトで得たお金が7,500円ほど残っていた。
< 10 / 76 >

この作品をシェア

pagetop