仮定法過去の恋〈下〉
「陽菜さんのおばあさまはここの卒業生か」




佐藤は写真を覗きこみながらどの人かを陽菜に尋ねる。



「可愛らしい方だね」

「はい、学生時代は英語と裁縫が得意だったと」





知ってる。

舞子さんは居残りの英語を丁寧に教えてくれたし、常にあの部屋で縫い物をしていた。

可愛らしいことなんてよく知ってる。





「おばあさまはご健在で?」

「……もう長くはないそうです」




「えっ……」

舞子さんが亡くなってしまうなんて考えられなかった。



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