仮定法過去の恋〈下〉
そのまま、ロビーで待つ。
舞子さんは俺を覚えているだろうか。陽菜の話では覚えているらしいが、人違いかもしれない。
むしろ、人違いでしたっていう方が安心できる。

この場から逃げ出してしまいたい。
そんな気持ちでいっぱいになる。

会わないほうが、答え合わせをしない方が、
舞子さんにとって、
俺にとって幸せなのかもしれない。

でも……。
好きになった人には、自分自身には、この恋には、
正直でありたかった。






施設の人が戻ってくる。


「陽菜ちゃんはいつも来てくれてるから特別に許可が出たから。でも次からは事前に申請してちょうだいね」


「わかりました。ありがとうございます」

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