仮定法過去の恋〈下〉
面会室に陽菜と向かう。
手にはモンブランの入ったケーキ箱を抱えて。
部屋の外からは、鳥がさえずる音や談笑する大きな声が聞こえていて、いつもの昼下がりだった。
ノックが聞こえ、ドアがスライドする。
陽菜と俺は立ち上がった。
「舞子さん、お孫さん来てくれましたよ」
車いすを押す介護士さんが声をかける。
「おばあちゃん、こんにちは」
薄く開かれている目は夢うつつだった。
陽菜に目で促され、車いすの前に行き、跪く。