【短編】クールな幼なじみと紡ぐロマン
「ううぅっ……」

 くやしくて涙がにじんできた。
 レビューを見たあとは頭が真っ白になって何も考えられなかったけれど、帰り際に美乃梨ちゃんの友だちがいつもみたいに笑いながら私を見て言ったんだ。

『こりずに新作なんて書くからだよ、パクリりぃこちゃん』
『莉緒ちゃんが美乃梨ちゃんみたいな人気作家になんてなれるわけないでしょ?』

 って。

 その瞬間わかった。
 あのレビューはあの子たちの誰かが書いたんだって。
 みりぃっていうのは美乃梨ちゃんのペンネームだ。
 きっと、私が言われた通り書くのを止めなかったからつぶしにかかってるんだ。

「でもだからって、こんなのひどいよ……」

 レビューを見て読みに来てくれる読者の人もいるし、あんなレビューがあったらきっと読みたいなんて思ってもらえない。
 もし読んでくれたとしても、本当にパクリ作品なのかなって確認に読んでるだけなんじゃないの?って思っちゃう。

 一生懸命書いた、大事な作品。
 こんな、明らかな(いや)がらせで(よご)されてくやしいし悲しい。
 にじんだ涙があふれてこぼれて、かわいた地面にシミを作った。

「莉緒!」

 地面のシミが広がるのを見る前に、はっきりと私を呼ぶ声がして思わず顔を上げる。
 すると、家の門扉(もんぴ)のところから私の方に走ってくる玲衣くんの姿が見えた。
 メガネがズレるのも気にせず、心配そうな顔で真っ直ぐ来てくれる。
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