【短編】クールな幼なじみと紡ぐロマン
 玲衣くんの腕って、こんなに(かた)くて力強かったっけ?
 剣道もしているからなのかもしれないけれど、小学生のころと全然ちがう。
 男の子って感じだ。

 そんな男の子に抱き寄せられてなぐさめられてるって考えたら、どんどんはずかしくなってきた。
 心臓がドキドキ鳴って、泣いてたとき以上に顔が熱くなってくる。

「……もう、大丈夫か?」
「ぅえ!? あ、うん……」

 落ち着いてきた私に声をかけてくれた玲衣くん。
 低い声に思わずうわずった声で答えちゃった。
 うぅ……さらにはずかしい。

「で、どうしたんだ? つらいことがあったんだろ?」

 玲衣くんは挙動不審な私の様子は気にせず、そのまま気づかってくれる。
 その優しさに、やっぱり玲衣くんだなって安心した私はポツリポツリと今日あったことを話していた。

「……なんだよそいつら。そこまで言うことなくね?」
「ははは……でも、上手く書けてないのは確かみたいだし、もう消しちゃおうかなって」

 私の話を聞いて怒ってくれた玲衣くんのおかげで少し胸が軽くなる。
 まだちょっと悲しいけれど、作品を消して気持ちを切りかえようってふん切りがついた気がした。

「……いいのか? 消して」
「え……?」
「書きたかったんだろ? だからがんばって書いたんだろ?」
「っ!」

 ちょっとしか話してないのに、なんで玲衣くんはそんなことも分かっちゃうのかな?
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