初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
 代官山の邸宅に着き、紫遥が作ったピーマンの肉詰めを二人で頬張っていると、紫遥のスマホが鳴った。湊からだった。

『今日は深夜まで撮影が長引きそうです。しばらくの間、家に帰るのは1時を過ぎそうですが、俺のことは気にせず、ゆっくり休んでください』

 早朝に家を出て行ったのに、深夜まで撮影があることに驚いた。もしかして家具を買いに行った日や、Bistiaの仕事として初めてマンションを訪れた日は、たまたま仕事に空きがあっただけで、これが通常なのだろうか。

「さすが人気俳優。休みないんだね」

 真夏が横から紫遥のスマホ画面を覗き込み、感心した。

「ねえ、久我くんって実際、どれくらい有名なの?」

「ネットで調べたことないの?」

「そんな勝手にあれこれネットで検索するなんて、悪いじゃない」

「紫遥ちゃん。相手は芸能人だよ。そんな気遣いされるより、むしろたくさん検索されて、検索サイトの急上昇とかSNSのトップに載った方が嬉しいでしょ!」

 真夏はそう言うが、どうしても湊のことを勝手に調べるのには抵抗があった。調べたからと言って、本人に検索履歴を見られるわけでもないのだから、バレようがないのだけれど、それでも勝手に相手のことを探っているという、後ろめたさがあったのだ。
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