初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
紫遥は絵を描いている間、湊に色々な質問を投げかけた。
 
 「今日ここに来たのはなんで?」

 「塾行くのダルくて。サボる口実です」

 「絵は好き?」

 「描いたことないですけど、小さい頃は好きでした。すみません、幽霊部員で」

「私に謝る必要ないよ。そうだ、好きな色は何?」

 「紫ですかね」

 「趣味とか、好きなことはある?休日何してるかとか、将来の夢でもいいんだけど」
 
 質問が止まらない紫遥に、湊は思わず眉をひそめた。
 
 「そんなこと、どうして知りたいんですか?」

 「あ、もし言いたくなかったら答えなくていいの。対象物について知った方が、よりいい物が描けるって、顧問の山口先生に言われてるだけだから」

 「……なるほど。先輩って、すごく真面目なんですね」
 
 てっきり紫遥も他の生徒たちと同様、自分に多少は興味があるのかと思ったが、あいにく紫遥は絵を描くことにしか興味がないようで、湊は思わず苦笑した。
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