初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
　確かに、元々着ていた服ではカジュアル過ぎて、この店では少々浮くかもしれない。湊が用意してくれたワンピースは店内の雰囲気に驚くほど合っていた。

　「あー腹減った。そうだ、差し入れって何作ってくれたんですか？」

　「大したものじゃないんだけど、ピーマンの肉詰めと、きんぴらと……」

　そう言って、袋を差し出すと、湊は嬉しそうに目を輝かせ、弁当箱を開けて、バクバクと食べ始めた。

「やっぱ先輩の料理、うまいです。これならいくらでも食べられる」

「そう？簡単なものでよければ、いつでも作るから言ってね。私、家政婦なんだし」

　目の前でガツガツと自分の作ったご飯を食べる様子を見るのは気分がいい。真夏の食べっぷりもいいが、湊も負けてはいなかった。
　
　次は何を作ろうかと考えていると、紫遥のスマホが鳴った。
　真夏からの電話かもしれないと思い、スマホ画面を見ると、そこに浮かんでいたのは「篠原チーム長」の文字だった。
　
　しばらく待っても、電話のコール音は止まらない。紫遥は思わず電話を拒否するのボタンを押し、スマホ画面を下にしてテーブルの上に置いた。

　しばらく夢中になって弁当を食べていた湊だが、スマホを置いた紫遥の様子がおかしいことに気付いて、箸を置いて尋ねた。

「もしかして、またあいつですか？」

「……うん。仕事の連絡かもしれないけど」
　
　紫遥がそう言ったのとほぼ同時に、次はメールの通知音が鳴った。

　おそるおそるトーク画面を開くと、そこには篠原からの意味のわからない長文メッセージが来ていた。
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