初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした

20 初めての合コン

 人気俳優MINATOの本名が「久我湊」であり、日本有数の大企業久我財閥の三男であることは、ファンであるなら誰でも知っている。
 だから、会社を買収というワードと結びついて、香奈子の頭の中にはすぐにMINATOの顔が浮かんだ。

 しかし、紫遥がMINATOと知り合いであるわけがないし、電話の相手がMINATOなわけもない。とりあえず、紫遥がなぜか統括部長に呼ばれ、そして電話で「久我」という人物と、会社の買収について話していることはわかった。

 だが、なぜそんな話を紫遥がしているのか、それが引っかかる。

 香奈子がうーんと考え込んでいると、中から「じゃあ、私仕事に戻るから」という声が聞こえ、見つからないように、香奈子はとっさに向かい側の会議室の中に入った。

 すりガラスから紫遥と統括部長が会議室から出ていくのを見て、香奈子は今週末にある合コンで紫遥の秘密を暴いてやると意気込むのだった。



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 紫遥との電話を切った後も、湊はご機嫌のままだった。
 湊は俳優業のかたわら、メンズコスメのプロデュースとその商品を扱う会社経営もしていた。実務はほとんど副社長に任せているが、湊自身、父親や兄が経営者であることもあり、経営に携わることや、会社のM&Aに関しては、元々ある程度の知識はあった。

 だから、思いついたのだ。紫遥の働く会社を自分のものにしてしまえばいい、と。そうすれば、紫遥が正社員になりたいという希望も叶えられるし、ストーカー従業員を左遷させるのも容易い。
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