初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
「行かないで欲しいと言えばいいんじゃないですか?」

「そんな女々しいこと言えるわけないだろ。もっとこう……スマートな方法はないのか」

「うーん、合コンをキャンセルしてもいいと思えるくらい、最高のデートプランを立てる、とかですかね?」

「それだ!!」

 町田のアドバイス通り、その日、湊は様々なデートプランを考え、紫遥に提案し、いかに合コンに行くより有意義な時間を過ごせるかを力説したが、紫遥の返事は「先にした約束を破るわけにはいかないから」というそっけないものだった。


 

 土曜の夜、真夏に食べさせる夕食を作ったあと、適当な服に着替え、軽くメイクをして家を出た。真夏は紫遥が初めての合コンに参加することを喜んでおり、快く見送ってくれた。
 
 合コンの場所は恵比寿駅から少し離れた個室の和食屋で、香奈子以外初めて見る人たちばかりだったが、こういう場に慣れていない紫遥にも優しい女の子たちばかりで、紫遥も安心して参加することができた。

 「じゃあ、この出会いにカンパーイ」

 香奈子の一声で、皆がビールジョッキを高々とあげて、お互いに目で挨拶を交わしながらグラスをぶつけ合う。

 男女八人が集まった室内は、お酒が入っていることもあり、すぐに熱気で室温が上がり、二時間も立つと皆ほろ酔いで、自然とお目当ての相手が決まっているようだった。

 そんな中、序盤から紫遥の隣をキープしていた男が、突然話を切り出した。

 「てか紫遥ちゃんってさ、隠れお嬢様なんでしょ?」

 「え?」

 「香奈子が言ってたよ。リムジンに乗って通勤してるって」

 「いや、それは色々事情があって……」
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