初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした

22 真夏の話

家に着くと夜の23時を過ぎていたが、真夏は紫遥の帰りが遅かったことよりも、合コンに行っていたはずの紫遥が、湊と一緒に帰ってきたことに驚いた。
 
「どうして二人一緒なの?紫遥ちゃん、合コン行ってたんだよね?まさかまた何かあったの?」

紫遥が何か言う前に、「たまたま帰り道が一緒だっただけだよ」と湊が答えた。
 
 なんとなくそれが嘘だということがわかっていたものの、真夏はそれ以上何も聞かずに、酒の匂いが残る紫遥と共に部屋の中に入っていった。

 
 
 一方リビングに1人残された湊は、今日のことを思い出し、苛立っていた。酔った紫遥を無理やりタクシーに乗せようとしていたあの男。気安く紫遥の肩に触れ、耳元で何か囁き、性的な目を向けていた。そのことを思い出すと、あまりにも腹が立って、今日は眠れそうにない。

 頭を冷やそうと、湊がシャワールームに向かおうとすると、ポケットに入っていた湊のスマホが鳴った。
 画面にうつる名前を見て、一瞬電話に出るのを躊躇ったが、考え直して通話ボタンを押した。

「……もしもし」

「おい、湊!なんで今日来なかったんだよ!お前のためにせっかく試写会の席とってやったのに!」

 電話口から聞こえるのは、同い年の俳優仲間、柴田修弥の怒声だった。
 
 湊はめんどくさそうに「大事な用ができたんだから、仕方ないだろ」と言い訳をするが、修弥がそんなありきたりな理由で納得するはずもなく、詰問は続いた。
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