初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
「それで、誰なんだよ。相手の女は?女優?それともグラドルか?いや、だったら湊を振るなんて真似しないか……わかった!アイドルだろー!!!」

「ちげーよ。てか、振られたなんて言ってないだろ。あっちに先約があったんだよ」

「振られてんじゃねーか!」

 ゲラゲラと楽しそうに笑う修弥に、先ほどとはまた別の種類の苛立ちが募る。

「お前な……」

「あの、湊さん」

 自分の名を呼ぶ声に振り向くと、そこには真夏が立っていた。

「おい、今の声、もしかしてその女といるのか?」

「また連絡する。じゃあな」

「おい、ちょっと待……!」

 湊は急いで電話を切ると、くるりと真夏の方を振り返り、笑みを浮かべた。

「どうしたの?」

「ごめんなさい、電話中でしたか?」

「いや。ちょうど話が終わったところだったから、大丈夫だよ」

「そうですか……あの……」

「?」

「話があるんですけど」

 真夏の顔には緊張の色が浮かんでいた。

 



 リビングのソファーで真夏と向かい合うと、紫遥と雰囲気が似ていることに気付く。一見正反対に見える2人だが、湊が元々知っていた紫遥は、一度心を許すと、真夏のようによく笑い、冗談を言って笑わせてくれるような女の子だった。

 しかし、久しぶりに出会った紫遥の雰囲気はあの頃とはまるきり変わっていた。これが大人になったということか、なんて思っていたが、今はそれだけが理由ではない気もしている。

「それで、話って?」

 強張った顔で座る真夏に、湊がそう尋ねると、真夏は手に持っていたマグカップをテーブルの上に置き、湊の目をまっすぐ見て言った。

「湊さんは、紫遥ちゃんのことが好きですか?」
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