初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした

25 悪魔の囁き

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 昼下がり、少し遅めのランチでも行こうかと、紫遥は大きな鏡の前で1人、身支度を整えていた。
 
 真夏はついさっき、同級生と原宿に遊びに行くのだと家を出ていったばかりだし、夕方までこの広い邸宅で1人で過ごすのもつまらない。いつもならBistiaでの依頼を受けているが、湊との専属契約があるため、休日の予定がぽっかりと空いてしまった。

 化粧下地とパウダーをはたいた肌に、アイブロウペンシルでサッと眉毛を描き、色つきの薬用リップを塗って、手櫛で髪をサッと整える。服はシンプルな白のTシャツとスカイブルーのジーンズというカジュアルかつシンプルな格好だったが、紫遥のスタイルの良さが際立っていた。

 紫遥がカバンを持ち、部屋から出ようとすると、1階からインターホンの音が聞こえた。

 真夏が忘れ物でも取りに来たんだろうか。

 「空いてるよー!」

 と、1階に向かって大きな声を出す。
 しかし、家の中に入ってくる様子はなかった。

(あれ、もしかして配達の人だった……?)

 紫遥が急いで階段を降りて、玄関に向かう。
 
 「すみません、お待たせしました!」とドアを開けると、そこに立っていたのは、湊の兄、周だった。

 「く、久我くんのお兄様……!」
 
 「やあ、湊はいる?」
 
 「いえ、お仕事に行っているかと……」
 
 「そうか……」

 周は残念そうな素振りをしたが、もちろん湊がほとんど家にいないことは知っていた。
 周は紫遥に会いに来たのだ。

 「あの、久我くんに連絡しましょうか?」
 
 「いや、いいんだ。気にしないで」
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