初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
「俺、先輩が何考えてんのかわかんないです……」

「何を考えてるか……」
 
 彼女は少し考えた後、悲しげな顔で微笑み、湊の頬に指先を伸ばしながらこう言った。
 
「久我くんに、私の初めてをもらってほしいの」

 ハジメテ。
 紫遥の口から出たその言葉の意味がわからないほど子供ではなかった。
 
「……自分が何言ってるかわかってるんですか?」

「わかってるよ」

 そう言う紫遥の瞳は、一切揺らぐことなく、真剣に湊を見つめていた。
紫遥が真剣だということがわかった瞬間、湊は自分たちのいる場所が美術室であることも忘れて、紫遥をテーブルの上に押し倒した。
 
 貪り尽くような激しいキスは、やがて舌を絡め合わせた濃厚な口付けに変わった。紫遥のシャツを脱がすと、肌はしっとりと汗ばんでいたが、胸元に顔を埋め息を吸っても、汗の不快な匂いはせず、むしろミルクのような甘い香りがするから不思議だった。
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