初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした

26 抑えきれない嫉妬心

撮影現場から出て、町田の運転する車に乗り込むと、急に眠気が襲ってきた。
 時計を見るともう夜の21時をまわっていたが、家に着いても紫遥たちが起きている時間だということに安堵する。

 今までは、撮影で深夜に帰宅し、蒸した野菜と鶏肉という決まったメニューで腹を満たす、味気のない毎日だったが、今は冷蔵庫を開くと「良かったら食べてください」というメモとともに、紫遥が作ったおかずが沢山詰められており、それを見るだけで1日の疲れが癒されるようだった。

 今日の夜食はなんだろうか。そうだ。今度、久々に半日休みの日がある。お礼を口実に二人でデートに行くのはどうか。銀座で開かれている個展に行くのもいいし、夜、ドレスアップしてから青山のジャズバーに行くのもいい。雰囲気もいいし、食事も美味いから、きっと紫遥は喜ぶはずだ。

 そんなことを考え、口元を緩ませていると、スマホのバイブ音が鳴った。
 開くと、周からのメッセージだった。
 どうせまた仕事のことか母親のことだろうと、メッセージを開くと、信じられない言葉が目に入った。

『今日家にお邪魔しました。紫遥ちゃんと話したよ』

「は!?」

 予想もしていなかった内容に、思わず大きな声を出してしまう。驚いた町田がバックミラー越しに湊を見て「どうしたんですか?」と尋ねた。

「いや、悪い。こっちの話」

 湊がそう言いながら、急いで周へのメッセージを打つ。

『先輩と何の話をしたんですか?』

 すると、数分も経たずに周から返信が届いた。
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