初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
 山口から触れられるのを初めて拒否した日、山口は自分の愛がなぜ伝わらないのか、と怒りの滲んだ声で訴えた。

「仮屋、どうしたんだ突然」

「先生にそういうことされるの、もう嫌なんです」

「なんだその目は。まるで俺が悪いことをしてるみたいじゃないか」

「……」

「俺は、父親にも母親にも捨てられたお前を放っておけないんだ。ちゃんと大人の男の温もりを、愛される喜びを知って欲しい。この気持ちがなぜわからないんだ」

 山口はそう言って、怯える紫遥をぎゅっと抱きしめた。

「ほら、温かいだろう?」

 最初は山口に抱きしめられることに、嫌悪感など感じなかった。むしろ、今までこんな風に優しく抱きしめられたことがないからか、心にじんわりと温かいものが広がる感覚が、心地よかった。
 
 しかし、山口の行為は抱きしめるだけにとどまらず、徐々に「愛情」を理由にして、紫遥の身体を性的にいたぶるようになった。

「下着を脱ぎなさい。ちゃんと成長してるのか、先生が見てあげるから」

「本当なら親がこうやって成長しているのを見てやるんだけど、仮屋は両親がいないもんな。先生が代わりにやってやろう」

「もちろん仮屋の純潔は必ず守るよ。先生は仮屋が大人の女性になっていくのを見守ってあげるから」

 どこかおかしいとわかってはいた。けれど、物心ついた時から一人だった紫遥は、この異常な愛を真正面から拒絶することもできなかった。先生は自分を必要としてくれている、愛してくれている、大事に思ってくれている。けど、周囲に話せないようなことをされていることも、理解していた。
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