初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
「他に気になることはありますか?俺に対する不満とか、不安とか」

「そんなのないよ」

「じゃあ、もう先輩が躊躇う理由はないですよね?」

「そう……だけど……」

 躊躇うどころか、紫遥にとっては夢のような話で、今目の前で起きていることが現実かどうかもわからなくなっていた。
 あの日、諦めた初恋の人が、自分を愛おしそうに見つめ、結婚したいと家族になりたいと言ってくれている。
 それだけで目頭が熱くなる。

 湊は真っ直ぐに紫遥を見つめ、もう一度同じ質問を口にした。
 
「紫遥さん、俺と結婚してくれますか」

 その言葉に、紫遥の目から涙が溢れた。
 悲しく泣いているわけではない、湊が自分と家族になろうとしてくれていることがどうしようもなく嬉しかったのだ。

「……はい」

 涙が伝う、紫遥のその白い頬に、湊は優しいキスをした。そして、また顔を離し、紫遥の方を切ない顔でじっと見て言った。

「あの、もう限界なので……俺の部屋に連れて行ってもいいですか」

「限界?って何が……」

 紫遥が言い終わる前に、湊は紫遥をぐっと持ち上げ、抱き抱えた。

「ちょ、ちょっと!久我くん!?んんっ……!」

 驚く紫遥の唇を湊が塞ぐ。徐々に口内に侵入する湊の熱い舌が絡みつき、紫遥は言葉を発せないまま、そのキスに囚われた。
 
「や…っ、久我く…ん、んん……」

 そのままキスをしながら、湊は自室に入り、そして紫遥をベッドに押し倒した。
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