初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
 紫遥の中に湊が入ってくる。紫遥は目を閉じて、それを受け入れた。
 はじめはゆっくりと、そして息を荒くさせた湊が動きを早め、激しく突き上げると、紫遥は必死に湊の身体にしがみつき、意識が飛んでしまわないように必死になった。
 
 紫遥はその日、何度も何度も頂点にのぼりつめ、その都度自分でも驚くほど大きな声をあげて、激しい快感に溺れた。




 
 
****
 
 翌朝、いつもより遅く起きた真夏は隣に紫遥がいないことに気づき、一階に下りた。
 しかし、リビングにもキッチンにも紫遥の姿はない。
 
 今日は湊の仕事部屋であるタワーマンションに引っ越す日だ。もしかして寝坊してしまったのだろうかと時計を見るが、まだ朝の8時だった。
 昨晩、高校の教師だったという山口と4人でご飯を食べていた時から、紫遥の様子が少しおかしかった。本人に聞いてもなんでもないとはぐらかされたが、また何かあったのだろうかと心配になる。
 紫遥は自分に心配させまいと一人で何かを抱え込む癖があったが、わかりやすい姉の言動や行動、顔色で真夏はいつも姉の違和感を感知することができた。

 真夏は一階にある湊の部屋の前に立ち、控えめに数回ノックをした。
 もしかしたら仕事に行っているかもしれないが、湊なら何か知っているはずだ。

「湊さーん!お姉ちゃんがいないんだけど知らないですか……って、え?」

 すると、部屋から出てきたのは湊ではなく、ブカブカの黒のジャージを着た紫遥だった。

「……紫遥ちゃん?」

「い、今から朝食作るね。湊くんは仕事行ったみたいだから……」
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