初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
(今なら、あのこと聞けるかも……)

 どうしてこの1週間まったく連絡がなかったのか。それだけのことを聞くのに、緊張で手に汗を感じる。
 紫遥はできるだけ何気ない質問に聞こえるように、明るく尋ねた。

「ほら、この1週間全然連絡してなかったし、会ってもなかったでしょ?だから、湊くん何かあったのかなーって」

「え……?」

「仕事で忙しいのはわかってたから、私からも連絡しなかったんだけど。ちょっとだけ…その…不安になっちゃって」

 言葉に出してみると、なぜだか恥ずかしさと情けなさで、目に熱いものが込み上げてくる。
 真夏の前ではこんなことなかったのに。どうしてだろう。

「いや、違うんです!うわ、俺サプライズのことで頭いっぱいで、全然そんなこと考えてなくて……」

 湊の焦る姿に、連絡がなかったことにやはり深い意味はなかったのだと安心する。

「私こそごめん。仕事で忙しくて、私に構ってる暇ないのはわかってたのに、連絡待っちゃったから」
 
 湊にバレないように、目の端に滲んだ涙を指で拭う。
 すると、湊がハッと何かに気づいたように紫遥の方をまじまじと見つめた。

「それって……寂しかったってことですか?」

「え!?」

「いや、紫遥さんが俺の連絡待ってたの意外だなって。メールとか電話とか、好きなタイプじゃないんだろうなって勝手に思ってたんで」

「……私だって、好きな人とメールしたり電話したり……したいよ」

 自分の欲望を口に出してみると、なんだか心の奥がくすぐったかった。
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