初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
 「籍をいれてからまた挨拶に来いって。本当、あの人は何考えてるのかわかんねーわ」

 「聡子さんが結婚を許した!?信じられない……何があったんですか?」

 「さあ。二人が何話したのかは詳しく知らないけど、母さんには紫遥さんは好印象だったんじゃないの?」

 「まさか……湊さんだって知ってるじゃないですか!聡子さんが湊さんの結婚相手に重要視してる条件なんて……」

 「それはわかってるけど、まあ理由なんてどうでもいいだろ。結果何事もなく許可してもらったんだから」

 それはそうですけど、と町田は納得のいかない顔をしたが、それ以上聡子について追求はしなかった。
 
 「けど、ずっと不思議に思ってることがあるんですよ」

 町田は顎に手をあて、首を傾げてみせた。

 「湊さんが彼女をそんなに好きになる理由がわからない。確かに綺麗ですし、いい人だとは思うんですけど、それなら今まで交際していた女性だって……」

 「全然違うよ」

 湊の断定的な口調に、町田の顔には戸惑いの色が浮かんだ。
 自分の出番まではあと三十分以上もある。生放送の緊張を解くためにも、紫遥との思い出を話すのはちょうどいいかもしれなかった。

 「高校の時……」

 湊はゆっくりとかつての思い出を噛み締めるように語り始めた。
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