初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
37 再会
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午後3時。湊に指定された待ち合わせ場所は、紫遥と真夏が長年住んでいたアパートだった。
生放送での衝撃発言の真実を明かし、湊に突撃取材するために、今頃記者は自宅や事務所に向かっているはずだ。
だから、人気俳優のMINATOとは不釣り合いのこのオンボロアパートが、密会にはちょうどよかった。
待ち合わせ時間より早めについた紫遥は、黒いキャスケットを深く被り、アパートの前でスマホを握りしめながら俯いていた。ここに記者たちが来ないとわかっていても、誰かに見張られているような気がして落ち着かない。
「紫遥さん、お待たせしました」
「湊くんっ……!びっくりするじゃない、もう」
へへっ、といたずらっ子のように笑う湊は、テレビ画面の中で微笑むMINATOとは別人に見えた。
こんな湊の一面を知っているのが自分だけだと思うと、紫遥は胸がぽっと暖かくなる。
アパートの鍵を開け足を踏み入れると、中は出てきた時のままだった。
必要なものは運び出していたため物は少ないが、ついさっきまで誰かがここにいたような雰囲気を部屋全体から感じる。
二人はちゃぶ台を間に向かい合わせに座って、一息ついた。外はまだ明るく、ベージュのカーテンは外の強い光をはねかえせずに、部屋の中に柔らかな光が広がっている。
もう誰の目を気にすることはない。二人だけの時間だ。
「……あの、びっくりしましたよね」
先に口を開いたのは湊だった。しゅんとして頭を垂れる姿に、少し文句を言ってやろうという気持ちも引っ込んでいった。
今日の昼、生放送での湊の発言は、完全に不意打ちだった。いつか世間にも報告するつもりだということは聞いていたが、それが今日で、生放送で、紫遥に断りもいれず行われるとは思わなかった。
「うん、びっくりしたよ。けど、どうして言ってくれなかったの?事前に知ってたら、色々できることあったのに……」
「仕返しです」
「え?」
紫遥がきょとんとした顔で聞き返した。
午後3時。湊に指定された待ち合わせ場所は、紫遥と真夏が長年住んでいたアパートだった。
生放送での衝撃発言の真実を明かし、湊に突撃取材するために、今頃記者は自宅や事務所に向かっているはずだ。
だから、人気俳優のMINATOとは不釣り合いのこのオンボロアパートが、密会にはちょうどよかった。
待ち合わせ時間より早めについた紫遥は、黒いキャスケットを深く被り、アパートの前でスマホを握りしめながら俯いていた。ここに記者たちが来ないとわかっていても、誰かに見張られているような気がして落ち着かない。
「紫遥さん、お待たせしました」
「湊くんっ……!びっくりするじゃない、もう」
へへっ、といたずらっ子のように笑う湊は、テレビ画面の中で微笑むMINATOとは別人に見えた。
こんな湊の一面を知っているのが自分だけだと思うと、紫遥は胸がぽっと暖かくなる。
アパートの鍵を開け足を踏み入れると、中は出てきた時のままだった。
必要なものは運び出していたため物は少ないが、ついさっきまで誰かがここにいたような雰囲気を部屋全体から感じる。
二人はちゃぶ台を間に向かい合わせに座って、一息ついた。外はまだ明るく、ベージュのカーテンは外の強い光をはねかえせずに、部屋の中に柔らかな光が広がっている。
もう誰の目を気にすることはない。二人だけの時間だ。
「……あの、びっくりしましたよね」
先に口を開いたのは湊だった。しゅんとして頭を垂れる姿に、少し文句を言ってやろうという気持ちも引っ込んでいった。
今日の昼、生放送での湊の発言は、完全に不意打ちだった。いつか世間にも報告するつもりだということは聞いていたが、それが今日で、生放送で、紫遥に断りもいれず行われるとは思わなかった。
「うん、びっくりしたよ。けど、どうして言ってくれなかったの?事前に知ってたら、色々できることあったのに……」
「仕返しです」
「え?」
紫遥がきょとんとした顔で聞き返した。