初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
 母親は紫遥の知らぬ間に、新しい男との間に子供を作っていたらしい。しかも、男とは籍をいれておらず、母が未婚のまま二人目の娘を産んでいたことに、紫遥は心底呆れ果てた。

 そして、それから1ヶ月も経たないうちに、母親は姿を消したのだ。
 
 突然新しくできた妹と二人きりの暮らしが始まったことに困惑しかなかったが、母親が突然いなくなり、不安そうに自分の服の裾を握る真夏を見ると、この子には私と同じ思いをさせるものか、という強い気持ちが湧き上がった。



 それから8年という年月が経ち、二人きりの生活には随分慣れ、今では真夏がいない生活など考えられない。だからこそ、自分は真夏の幸せを一番に考えなくてはならない。
 
 そうやって生きてきた紫遥にとって、昨晩の出来事は大きな過ち、決して許されない罪同然だった。
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