初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
確かに昨夜、彼女を抱いた時の幸福感は言葉にならないほどだった。自分の隣でスヤスヤ眠る彼女を見て、湊は頭の下に腕をそっと差し入れ、うぅん、と小さく唸る紫遥の髪を、起こさないようにそっと耳にかけてやった。

 今まで関係を持ってきた相手には、腕枕など一度もしたことがない。だが、紫遥の穏やかな寝顔を見ていると、自然とそうしてやりたくなったのだ。
 
 それくらい彼女との行為は、特別だった。

淫らにくねらせた身体は信じられないほど美しく、中に入ると全身が蕩けて消えてしまいそうな感覚がした。彼女の喘ぐ声を聞いただけで、湊のものは固くなり、一層彼女の奥深くを責め立てた。

 だが、それがなんだというのだ。
たしかに昨晩の自分はらしくなかったが、それは身体の相性がたまたまよかっただけのこと。彼女がどんな生活をしてようが、どんな苦労をしてようが、どんな事情を抱えてようが、自分に関係はない。高校時代に片思いしていた相手と、一夜限りの関係を持っただけのこと。
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