初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
 正直なところ、スキャンダルを撮られたとしても、事務所の力、もしくは久我家の力で記事をもみ消すことは可能だった。しかし、町田はこんな写真を撮られてしまうくらい気の抜けた湊を心配して、わざと大袈裟に叱ったのだ。
 
 町田は自分の気持ちが、湊にやっと伝わったかと安堵したが、湊が反応したのは予想外の部分だった。

「彼女にどう迷惑がかかるんだ」

 町田は湊の言葉を聞いて、呆れて言葉を失った。

 彼女にどう迷惑がかかるかって?
芸能人なら事務所が守ってくれる。けど、一般人の彼女は自分を守ってくれる盾がない。湊の熱狂的ファンに職場や住所を突き止められて、嫌がらせを受けるかもしれないし、ネットでプライベートの写真を晒されるかもしれない。

湊と一夜を共にしたばっかりに、彼女はまともな生活を送れなくなるかもしれないのだ。

 
町田が言葉を選び、そのことを丁寧に説明すると、湊はしばらく考え込んだあと、何かを思いついたようにパッと顔を上げた。

「大丈夫、俺にいい考えがある」
 
 そう言う湊の悪戯っ子のような微笑みを見て、町田は嫌な予感に冷や汗を垂らすのであった。
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