初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした

7 強引な後輩

 職場については調べさせてもらった、と町田に聞いたけれど、他にも自分のことを色々調べたのだろうか。
そもそも、警察でもないのに、借金のことまで知ることなど現実的に可能なのか。色々な考えが頭の中をぐるぐる回る。


「……なんで久我くんが借金のこと知ってるの?」

 おそるおそる聞くと、湊は淡々と答えた。
 
「興信所に頼めばある程度の情報は手に入れることができます。相手の身元、素行、職場、資産状況、交友関係……とにかく先輩が良くないところから借金をしていて、それを返すのに、今のままだと10年以上かかるということくらいは、すぐにわかります」

 「そう、なんだ……」

 湊はわざと、紫遥の借金が紫遥自身のものであるような言い方をした。もちろん紫遥の母親が作った借金であることは知っているし、その母親の行方がわからなくなっていることも、紫遥のことは隅々までよく調べたので知っている。

 だが、紫遥は「母親の借金だ」と言い返すことはなく、まるで全て自分の責任だというかのように、重ね合わせた両手をギュッと握り締め、座っていた。
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