初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
「じゃあ、そろそろこの辺りで……」

 もうあと数十歩歩けば家に着くというところで、突然篠原が紫遥の腕をぐいと掴んだ。

「……っ!?」

「仮屋。話があるんだ」

 突然真剣な表情でこちらを見つめる篠原に、紫遥はぞっとした。

「なんですか……?」

「今までいつお前から気持ちを伝えてくれるか待ってた。けど、仮屋は俺からの告白を待っていたんだな」

「はあ……?」

 突拍子もない発言に、紫遥は口をポカンと開けて、篠原を凝視した。しかし、篠原はいたって真面目な様子で、紫遥の気持ちに気付いてやれなくてごめん、というような内容のことを延々と話した。

「ちょ、ちょっと待ってください!別に私、チーム長に謝って欲しいとか思ってません!それに、告白ってなんのことですか?私の気持ちって……」

「今さら誤魔化しても無駄だぞ。昨日わざわざロビーで男と会ってたのも、俺を嫉妬させるためだったんだろう?」

 その瞬間、紫遥の身体中にぶわっと鳥肌がたった。

 篠原はとんでもない勘違いをしている。自分が篠原のことを好いていると思い込んでいるのだ。
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