初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
 「わあ!おしゃれー!」

 部屋に入った途端、真夏がそう叫んでしまうのも無理はなかった。


 部屋の中はシンプルな外装とは雰囲気が代わり、ヨーロピアン風のアンティーク家具で統一されており、ボタニカル柄の壁にはいくつもの絵画が飾られていた。

 「この客室を使ってください。家具は何年も前からあるもので申し訳ないですが、その代わりベッドも机もテレビもなんでも揃っています。ただ、少し狭いので、もし二人別々の部屋がよければ用意しますけど、どうしますか?」

 狭いと湊は言うが、部屋は10畳以上あり、キングサイズのベッドもある。もしかすると、自分たちの住むアパートより良い環境かもしれない。

 紫遥は二人一部屋で問題ないと答えた。



「そういえば晩飯まだですよね?何かデリバリー頼んでおきます」

「あ、いいよ!コンビニでなんか買ってくるし」

「俺も腹減ったんで、ついでです」

「そう……じゃあ、お言葉に甘えようかな」

「はい。とりあえず食事がくるまで、適当にくつろいでてください」

 そう言って、湊は一階に降りて行った。

 真夏は部屋の中に飾られている絵画やアンティーク品に興味津々で、目を輝かせながら部屋の中を物色している。

 壊さないようにね、と真夏に声をかけて、紫遥はそっとベッドの上に腰掛けた。

元々あったとはいえ、ほとんど使用されていなかったのか、ベッドのスプリングは全くへたっておらず、紫遥の疲労の溜まった身体をしっかりと支えてくれた。
< 86 / 258 >

この作品をシェア

pagetop