初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
 夕焼けの光に照らされて、ぼーっと立ち尽くす彼は美しかった。それなのに、どこか儚げで、触れると消えてしまいそうな、そんな気がしたのだ。
 彼が消えてしまう前に絵に残したい。そう思った瞬間、湊に声をかけていた。




 部屋でくつろぎ始めてから数十分後、届いたデリバリーのピザを食べ、家にあった最新のゲームで3人で遊んだ後、真夏は遊び疲れたのか、いつのまにかソファーで寝落ちしてしまった。

「俺、2階まで運びますね」

「ごめんね、ありがとう」

 湊はそっと真夏を抱き抱え、2階へと上がって行った。

 真夏、たくさん遊べて嬉しそうだったな。そう思うと、顔が自然と綻ぶ。

 自分のせいで突然湊の家に居候することになり、真夏に悪い影響がないか、ストレスがかからないか不安でしかなかったが、今日の様子を見る限り、平気そうだった。

 これから仕事部屋のタワーマンションに移り住むまで、約1週間はここでお世話になるのだから、何か少しでも役にたつことをしなければと、紫遥は立ち上がりテーブルの上のものを片付け始めた。
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