初めてを捧げたのは、人気俳優になった初恋の人でした
　湊がじっと紫遥を見ていると、ブラウスの胸元に入っているスマホがチカチカと光った。

　「メール、きてますよ」

　「え？あ、本当だ」

　紫遥は急いでポケットからスマホを取り出し、メールを確認する。

　(そういえば、俺が今日彼女の家まで行ったのは連絡先を聞くためじゃないか。色々あってすっかり忘れてたな)

　町田に頼めば、紫遥の連絡先も容易に手に入れることができたが、どうせなら直接会いたかった。

　「そういえば、連絡先教えてください。知らないと色々不便なんで」

「あ、そうだよね！じゃあ、QRコードで……」

　紫遥が操作しているスマホを見ると、所々色が禿げて、傷がついている。さらによく見ると、画面も端の方が割れているようだった。一度落としたくらいで付くような傷ではない。こんなに何度もスマホを落とすような、抜けた人だったか？と首を傾げる。

「用事がある場合はメールでお願いします。急用の場合は電話で。もし俺が電話に出なかったら、町田に連絡してください」

「わかった」

　連絡先を交換した湊は、仮屋紫遥という名前が自分のスマホ画面に表示されているのを見て、密かに笑みを溢していた。
< 93 / 258 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop