近寄りがたいキミの愛にリトライします!
八島真人くんはクラスでも目立つほうではなかった。
ベランダ側の一番後ろの席が真人くんの席だった。その自分の席を思う存分利用するかのように、真人くんは休憩時間、休み時間、誰とも接さず本ばかり読んでいた印象がある。
彼は空気のような存在だった。私も、真人くんを空気のように思っていた。
ーーあの日までは。
◆
「由衣、あと一週間後中間テストなんだからちゃんと勉強した方がいいんじゃない? ほら、私教えるからさ!」
双子の妹由衣は成績が良くはない。中学三年とはいえ、一学期ということをいいことにまだ余裕な様子を見せる由衣は、いつものようにリビングのソファで横になってスマホをイジっていた。
私と由衣は一緒の志望校だが、このままでは由衣が志望校に合格するかも微妙なところだ。
だからこそ、テスト自体が大事なのに「うっるさいなー、テストの前日から勉強するから黙っててよ! せっかく休み期間で部活もないしさー」と、反抗的な態度を見せる。
由衣はそれでいいかもしれない。
けれど、毎回毎回由衣の勉強の不出来さは、私の教え不足のせいだと親に言われてきた。前回も、前々回も、「由真がちゃんと教えてれば由衣の成績はもっとよかったんじゃない!」と言われる。