近寄りがたいキミの愛にリトライします!
決して家が同じ方向というわけではないのに、それから毎日、テスト勉強で居残りした日は家のすぐ近くまで送ってくれた。
――けれど、八島くんは私のことを聞いてくるわけでも、自分のことをしゃべるわけでもなかった。ただ、送ってくれているというに近い。
そんな中、テストが来週から始まるという日まできてしまい、これで八島くんの後ろ姿を見ながら勉強するのも最後で、家に送ってくれる今日も、やっぱり変わらず一言も発してくれない。
まるで、「鎌田さん」そう最初に、名前を呼ばれたことが奇跡のようだ。
「じゃ、じゃあ、今日も送ってくれてありがとう」
「うん」
頷いたものの、八島くんは何かを言おうとしている風に見えた。
「…………ね、あのさ、鎌田さんの志望校って……どこ?」
「…………え?」
「いや、単に気になって。俺、南高なんだけど、一緒だったら嬉しいなって」
八島くんは頬と耳を赤くして、恥ずかしさに耐えているように見えた。
もしかして、少し私に気を許しはじめてくれたのだろうか。八島くんの人間性が少し見えた気がした。
それに南高は私が行きたかった進学校だ。今の学力ではギリギリなため、あえて由衣の行くランクに下げていたけれど、八島くんが南高に行く。
…………私も、私も南高に行きたい。